調査の対象を測定する際、長さ、重さ・速さなどの物理量を測定するのと同じように、関心度、購入意向・満足度などの「気持ち」を測定する方法(態度測定・心理測定)は調査にとって欠かせません。調査における測定は社会学や心理学の方法が応用されていますが、変数をその性質に応じて4つの尺度に分けて整理しています。
Wikipediaによると、提案したのはスタンレー・スティーブンズ(Stanley Smith Stevens)です。1946年にサイエンス誌に発表された”On the theory of scales of measurement”という論文の中で、変数の4つの尺度、「名義尺度」「順序尺度」「間隔尺度」「比例尺度」について説明しています。
それぞれの尺度については具体例を見たほうが分かりやすいと思いますので、以下に例を示します。
調査に用いる4つの尺度
名義尺度
名義尺度とは、性別、居住地域、所属学部、学籍番号など、対象を区別し分類するための名称のようなものです。
集計の時は、数値に変換しますが、男性を1、女性を2と数値を割り当てて、データ処理するための情報に置き換えただけで、その数値の大小関係に意味はありません。男性を0・女性を1の数値を付与しても機能は同じです。
可能な演算は「男性の人数」あるいは「自由回答の中でのキーワード出現数」のような度数カウントだけになり、統計量としては最頻値を得ることができますが、中央値や平均値を求めても意味がありません。
順序尺度
順序尺度とは並び順に意味がある尺度で、大小関係はありますが、間隔には意味はない尺度です。
例えば、売り上げランキングの順位や成績の5段階評価など、順序関係を持ちますが、値同士の差に意味はありません。順序尺度の最頻値や中央値には意味がありますが、足し算に意味がないので平均値にも意味がありません。
また、 1:よい、2:ふつう、3:わるい
というアンケートの回答を数字で表現したものも順序尺度ですが、実務上は間隔尺度と同様に処理することがあります。
間隔尺度
目盛が等間隔になっているもので、大小関係に加えてその間隔に意味がある尺度です。例えば、西暦や温度、偏差値が該当します。
比には意味がない尺度で、気温が19℃から1℃上昇すると20℃になるとは言えますが、10℃から20℃に上昇したとき、2倍になったとは言えません。また、0は相対的な意味しか持ちません。偏差値0は相対的な意味しか持ちませんが、偏差値が50から55に上昇した時偏差値が5増えたということができます。統計量は、大きさを持つので、平均、標準偏差が利用可能です。
比例尺度
大小関係と間隔、比率に意味があり、尺度の中では最上位の尺度です。
間隔尺度までの全特徴に加えて、0が絶対的な意味を持ちます。例えば、身長、体重、値段、製品シェア、売上高、年収、販売数、来場者数などが該当します。温度も絶対温度で考えた場合は比率尺度です。
「年収400万円の人は200万円の人の2倍であり、800万円の人は400万円の人の2倍の年収がある。」というように、比を考えることに意味があります。
「間隔尺度」との違いは「0の値に意味があるかどうか」です。温度や西暦は「0」だったとしても、その温度や西暦が「無い」わけではありません。一方で、身長や速度が「0」であるときは、本当に「無い」ときです。
統計量は、値が絶対的な意味を持つので、最頻値、中央値、平均値、いずれにも意味があります。また、加減乗除の四則演算に及び、比例変換( Y=aX )が可能です。
質的データと量的データ
変数については、ここで説明した4つの尺度以外にもう一段上位の分け方もあります。「質的変数」と「量的変数」という分け方で、名義尺度と順序尺度は質的変数に属し、間隔尺度と比例尺度は量的変数に属します。質的変数については「カテゴリー変数(categorical variable、カテゴリカル変数ともいいます)」という呼び方もあります。
下表に、特徴をまとめました。
変数の種類 | 尺度名 | 尺度の値の意味 | 例 |
---|---|---|---|
質的データ | 名義尺度 | 他と区別し分類するためのもの | 性別、居住地域、所属学部、学籍番号 |
順序尺度 | 順序には意味があるが間隔には意味がないもの | 売り上げランキングの順位、成績の5段階評価 | |
量的データ | 間隔尺度 | 上記に加えて間隔(値の差)に意味があるもの 0は相対的な意味しか持たない |
西暦、温度(摂氏)、偏差値 |
比例尺度 | 上記に加えて比率に意味があるもの 0は絶対的な意味を持つ |
身長、体重、値段、製品シェア、売上高、年収、販売数、来場者数 |
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