2025/07/01
大学における東京23区内の収容定員規制の緩和と新増設の変化
2025/07/01
4月上旬、2026年度(令和8年)学部等設置・収容定員増の認可申請の諮問が文部科学省より公表されました。大学だけをみると、学部等の設置が25校、収容定員の増加が16校、特徴的だと思えたのは東京23区内にキャンパスを持つ大学の申請が昨年よりも増えていることです。
この大きな要因として、2023(令和5年)6月に東京23区内の収容定員規制が緩和されたことが考えられます。
特定地域内学部収容定員の抑制等に関する命令の一部を改正する命令の施行について(通知)
東京23区内における学部・学科の定員増は原則として禁じられています。ただし、いくつかの例外事項は当初からあり、これらに「高度なデジタル人材の育成」をする場合が加わったのです。
大学の学部等の新設・収容定員増は前年の3月が認可申請期間になります(※2025年4月の新設や定員増なら2024年3月申請)。2023年6月の緩和であれば2024年の3月、つまり昨年の申請に間に合ったのでは?とも思えるかもしれません。
しかしながら、同じ年の初めに、2025年度設置分から「大学の設置等に係る提出書類の作成の手引」が大きく変更されることが先触れされておりました。
特に、学生の確保の見通し等を記載した書類のうち「学生確保に関するアンケート調査」に関しては、厳しい条件が決められました。これにより、申請の準備には従来よりも時間がかかるようになってしまいました。
こういった事情も重なり、「高度なデジタル人材の育成」という例外事項が増えたにも関わらず、昨年(※2025年度設置分)の23区内の設置・定員増の認可申請は3件にとどまりました。
最初に述べたように、今年(※2026年度設置分)の設置・定員増の認可申請は3月提出分だけで10件と増えております。
収容定員増の認可申請書類提出日は6月末にもありますので、まだ増える可能性もあります。
また内容を見るとほぼ情報系学部や学科であり、「高度なデジタル人材の育成」の例外事項を適用したものであることがうかがえます。
もちろん審査を経て許可がされる必要はありますが、いずれにせよ、2026年度はこれまでよりも23区内で動きがあることは確実です。
2027年度以降についても引き続き、例外事項の適用により「高度なデジタル人材」を育成する学部学科の新設や定員増が中心になると見込まれます。
高度なデジタル人材の育成は社会的にも急務かつ必要であることは十分理解できます。この新たな例外事項は、一定期間の猶予があるとはいえ、23区内の別な学部等の定員減が条件とされています。その結果、他の目標を持つ学生の選択肢を狭めてしまうのではないでしょうか。
また、認可申請が許可されれば終わりというわけではありません。設定した定員を充足できるのか、今後はそういった課題が出てきます。
全国的に見れば、近年では毎年、情報系の学部等は数多く新設されています。つまるところ、ライバルは非常に多いのです。
蓋を開けてみたら、募集状況は非常に厳しいという話は割と耳にします。既にある学部等にも言えることですが、学生に学部等の情報は詳しく伝わっていたのか、入学生はどう感じているのかというようなことを検証して運営に活かしていくことが、今後は一層必要になってくるように思います。