立春の頃は少しだけ暖かかったのに、その後また寒くなりましたね。 こんにちは!代表の佐藤です。
この度下記のようなテーマにてJMRXの勉強会でお話する運びとなりました。マーケティングリサーチ業界としては繁忙期となる年度末で恐縮ですが、お時間の許す方はぜひご参加ください。
下記のリンクよりお申し込みいただけます。お待ちしております。

2月26日 JMRX「もし、ITエンジニアがMR会社の社長になったら」(東京都)

個人的にはJMRXでお話するのは2010年頃の予測市場のお話に続き2回目になります。 自分の頭の整理をかねて、当日お話したい内容を何度かに分けてブログに簡単にまとめておきたいと思います。

情報産業としてのMR(マーケティング・リサーチ)

社会情報学的にはモノ(物質財)の移動を伴わない産業は広義の情報産業だ考えられます。その意味ではマーケティング・リサーチは立派な情報産業です。ちなみに、おなじように考えてみると弁護士や税理士といった士業から、放送メディア、お笑いタレントまで個人的には情報産業だと考えてよいと思っています。
これらの広義の情報産業は当然のことながら社会に存在する何らかの情報の偏在や処理コストが高いことにその業としての成立を起因しており、これらの偏在やコスト低下をもたらす様々な技術的革新に対して極めて脆弱であることは論を待ちません。それではマーケティング・リサーチにおいてどのような変革が今求められているのでしょうか。

マーケティング・リサーチの業界で今起きていること

インターネットに代表されるネットワークが普及される以前の世界では、印刷・電波媒体に依存した一方向性メディアが主流でした。そのため消費者の生態を知る上では主にAskingによる調査(リサーチ)を実施して理解するしかないという理解が定説だったと言えます。 しかし、ほとんどの消費者が”センサーネットワーク”で接続され、常にネットワークに接続されている環境では、様々な発言、行動、商品の購買履歴などがほぼリアルタイムで把握できる用になりました。その環境の変化を持ってマーケティング・リサーチにはListeningの大波が押し寄せ、その有り様は大きな変革にさらされています。

機械学習のインパクト

一方、2010年代に入り急速に発達してきた機械学習手法、特にDeepLearning(深層学習・DL)は従来困難だった、比較的曖昧な概念の特徴量定義の自動化を可能にしました。またそのDLを応用したGAN(Generative Adversarial Networks)による生成モデルが「なんとなくこんな感じ」という人間の感覚の再現に成功するなど、いわゆる人工知能による様々なイノベーションが続々と世界にインパクトを与え始めていると考えるのが妥当ではないでしょうか。だだし、これらの機械学習を利用するには大量のデータが必要ですが、その手配は必ずしも容易ではなく大量の学習データを準備できたプレイヤーが勝利すると見込まれています。

機械学習の限界

しかし、その一方で機械学習(人工知能)のできることも限られています。なぜならすべての統計モデルがそうであるように、機械学習で分類される事象・観点は「過去のモデル」に強く依存しているからです。まして学習に用いるデータがセンサーネットワークで取得できる行動データだとすれば、特定時点の過去モデルに依存する予測精度は向上するでしょうが、モデルそのものの破壊的で非連続的なイノベーションにはあまりにも無力です。過去の局所最適解に執着した結果全体最適解に敗北するという現象は、かつてクレイトン・クリステンセンが産業レベルで述べたイノベーションのジレンマに近い現象が、消費者マーケティングモデルレベルで発生していると言えます。

Listeningデータの功罪

センサーネットワークで取得された大量のデータは、大量の統計モデルを生み出し、DataRobotのように仮説検証すら自動化される時代が訪れています。しかし、あくまで行動データから読み取れるものはアウトカムに過ぎないため、マーケターが必要としている消費者・生活者の心の奥底に眠る「あたらしい欲求・意図」(いわゆるインサイト)にたどり着くのは容易ではありません。またAskingデータのように統制されたデータではなく、現実社会のノイズにまみれたデータから科学的検証に耐えうるデータを抽出して知見を生み出すことは容易ではなく、いわゆる「集めてみたらこうでてきましたけどそれが何?」というよくある口コミデータ解析のような状態になっています。 長くなりましたので、その2に続きます。(あるのか。。)