“ひとりでも多くの人たちが《働く喜び》を膨らませ、《働く喜び》の輪が、新たな活力を生み出している社会を創りたい”

これは、リクルートキャリアのビジョン=目指したい未来です。

弊社がこのビジョンに真っ正面から向き合うことになったのは、2014年に《働く喜び》が生まれる構造(どうすれば《働く喜び》を増やすことができるのか)を解明するための調査プロジェクトが、リクルートキャリアの広報部を中心に結成され、そこで調査設計・解析面からサポートする機会をいただいたのがきっかけです。

過去の調査研究などから《働く喜び》の構造仮説を設定、日本全国の就業者1万人以上を対象に調査を実施。そしてその結果を基に働く喜びの当初の構造仮説を検証し、何度も解析とディスカッションを繰り返しながら最適なモデルを目指しました。時に暗礁に乗り上げそうになりながらも最終的には「働く喜びが生まれる構造モデル」として着地をすることができたのですが、このプロセスはまさに、プロジェクトメンバー全員で働く喜びを分かち合うことができた貴重な経験でした。

その調査結果はリクルートキャリアのビジョン・ミッションのページで掲載されています。
(「働く喜び調査」5年間の報告書 13ページ以降参照)

そして、その「働く喜びが生まれる構造モデル」をコアにして、【変わる労働市場】【変わる個人と企業の関係】【変わる個人のキャリアの行方】について豊富なデータとケースで解説した著作が『働く喜び 未来のかたち』(リクルートキャリア編/リクナビNEXT編集長 藤井薫著)です。
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まず、8割の人が「働く喜びは必要」と思っているのに、6割の人が「働く喜びを感じていない」という調査結果を引用しながら、どのようにしたら働く喜びを増やせるかについて「働く喜びが生まれる3C構造」として紹介しています。

  • Clear(持ち味の自覚や、やりたいこと、自分軸の自覚) 
  • Choice(持ち味を生かせる、仕事・職場の選択)
  • Communication(上司・同僚との密なコミュニケーション、期待がある)
また、我々の「未来の働き方」に大きな影響を与える労働市場の不可逆な構造変化を4つの側面で取り上げ、「働く喜びが生まれる3C構造」を取り囲む社会構造の変化として整理されています。

  • Social     少子高齢化・人口オーナス(長寿の時代)
  • Economy  サービス経済化・モノからコト(意味の時代)
  • Technology 第4次産業革命・AI/人共進化(知性の時代)
  • Politics   管理統制から自己組織化(共生の時代)
そして、この構造変化により、以下の3要素を持つ人々(キャリアオーナーシップ、ライフワーク・オーナーシップを持つ人々)が溢れる社会が不可欠であること、企業と個人の関係を日本型雇用システムにより失ってきたものの逆説として描いています。

  • 自らの持ち味を発見する主導権は、会社でなく自らにある(自律性)
  • 自らの持ち味を生かす仕事、職場の選択肢は、多方面にある(選択観)
  • 自らの持ち味に期待し合う仲間と、会社を越え広く長く繋がる(繋がる力)
そうした働く個人のライフウエアの変革が勃興しつつある中で、半ば強制的に全員一律に労働時間を減らし、会社目線の効率化・無駄の削減を行うだけの、今の「働き方改革」とは一線を画す「働く方変革」の必要性について、具体例を挙げながら提言しています。

【働く方(方々)変革】
 働く人々に主権が移る。個人と企業の関係が変わる。
【働く方(方向)変革】
 壁が崩れ転職先が広がる。企業の採用戦略が変わる。
【働く方(方法)変革】
 管理束縛の関係が変わり、会社との繋がりが変わる。

このような未来の働き方への予見を、「働く喜び調査」のみならず、リクルートワークス研究所などリクルート内に蓄積されている様々な調査結果、海外の研究成果、リクナビNEXT、アントレなどの編集現場での豊富な事例を基に解説しているのが本書の特徴といえます。
未来の労働市場の変化に対応すべく、組織と個人のより良い関係を構築し、変革成長していきたいと考える企業経営者や人事部門の責任者に、様々な角度から示唆を与えてくれる書籍だと思います。

信時 裕