2018年11月、NEC本社ビルにセブイレブンが無人コンビニのテスト店舗を出店。顔認証を用い、NEC社員証と紐付けることで、キャッシュレス化(支払いは給料天引き)を実現したというニュースが、日本でもちょっとした話題になっていたことから、「無人店舗ってどんな感じなんだろう」という興味を感じていた。

今年の1月下旬、台北に遊びに行ったついでにセブンイレブン台湾の無人店舗「X-STORE」へ潜入してきた。めっちゃnear futureを匂わせる店構え。というか、丸見えすぎてちょっと怖い。古い建物の間にひっそり建ってはいるものの、ミスマッチさは否めなかった。覆面調査ばりのやる気で入店。
まず、最近のビルに多いIDカードでのセキュリティゲートがあり、何かしらかざすことは理解。ゲートの横にQRコードが提示してある画面があったので、“これで何かしらダウンロードして登録すればいいんだなと”勝手に理解。繁体字が読めないけど、なんとなく個人情報を入力。 「SMSにパスコードを送ったから入力してね!」との画面が出たけど、パスコードは送られてこない。結局何度かトライしたが、ギブアップ。入店は諦めて、併設されているイートインコーナーで店内を物色。テーブルにはワイヤレスの携帯充電器が備えてあり、とても便利。誰か利用者が来ないかな~~と今度はミラールームでGIを見る面持ちで待機。
そこへ現地の女子高校生5人組がやってきた。
1人の女子がnanacoっぽいカードをかざし、別の女子が一人でゲートイン。(本人は乗り気でなかったような・・・)。外で見ている女子高生は入店した友達の利用状況を、スマホで動画撮影。入店した友達は店内をウロウロし、コーヒーカップを手に取る。だけど「どこでコーヒー入れるの??」といった様子でキョロキョロうろうろ。ぐるぐる店内を周ったが結局わからなかったようで、空のカップを手に戻ってきてしまった。
言葉はわからないけど「何やってんの?」「だってどこで入れるかわかんなかったんだもん!」「ないわけないじゃん。もう一回行ってきなよ!」と言われ、渋々店内へ戻っていった雰囲気。再度キョロキョロうろうろし、ベンダーを発見。遠目でしか私も見えなかったけど「近未来すぎてベンダーだとわかりづらい」機械だ。無事コーヒーをゲットした女子高生は満足そうに戻ってきた。友達は速攻で動画をチェックしSNSにUPしている模様。 私がずっと見ていたので「おねーさんも入ってみる?カード貸してあげるよ」と言われたけど(いとこが通訳してくれた)、入っておばさんがキョロキョロうろうろしている様子をSNSにUPされたら・・・と思ってしまいやめておいた。彼女たちいわく、店舗でカードを作れば入れるけど台湾のIDカードが必要だって。じゃあこのQRコードは何なの?と聞くと、ポイントや割引が受けられるサイトの広告だって・・・あんなに苦労したのに!
その後、小さい子供を連れた父娘がやってきたが、やっぱり物珍しそうに入り、何も買わずに出ていった。X-STOREの向かいには有人店舗もあり、そこは大盛況。まだまだ浸透はしていないし、使い勝手もわからない(説明もない)店舗はコンビニエンスではないって感じられているのか?
最後に、有人店舗も徘徊してみたところ、チルドコーナーの棚が人の気配を感知すると自動で開閉。思わず何度もコーナーの前に立ってみた。動画も撮影(笑)
利便性あふれる最新のサービスを体験できることはとてもワクワクすることだ。 このような体験の一方、台北ではまだまだ八百屋さん、果物屋さんなど“○○○屋さん ” と呼ぶにふさわしい個人商店やサービスがたくさん残っている。 歴史的な背景と文化を感じられる街や、儀礼を重んじる人々の生活を感じることが私の台湾旅の目的でもある。すばらしい歴史と文化を持ち大切にし儀礼を重んじる気持ちを忘れることのない台湾人の生活が、利便や利益だけを追求する味気ないものに変わってしまわないで欲しいと今回強く感じた。
それは日本も同じ。“らしさ”は過去から今へ受け継がれた大切な財産であり、壊してしまえば元にはもどらない。
インバウンドの受入体制もしかり、利便性や効率化は一歩間違えると大切なものを簡単に壊してしまう可能性もある。何がベストなのか、いち旅行者の気持ちや立場になって自分の地域を旅してみることも有効なのかもしれない。

黒澤聖子