観光DXを進めたいと思っているけど、よくわからない。そもそもDXってなに?という方も多くいらっしゃるでしょう。そこで今回は、「DX化」から「観光DX」までを具体的な事例を用いて簡単にご紹介します。

DXとは?

まずDXとは、デジタルトランスフォーメーションの略称で、デジタル技術を用いてこれまでの概念やあり方を変えることです。

これだけではわかりづらいので、詳しくみていきましょう。DXの前には「デジタル化」「IT化」という2つのステップがあり、順を追ってそれぞれのステップについて説明していきます。

デジタル化

これまでアナログな手法で取り組んでいた事柄を、デジタル技術によって自動化・最適な形へ変化させることです。具体例として、以下のことがあります。

  • 手紙から電子メールへ
  • 紙の書類を電子化(PDFや画像)する
  • 印鑑による押印を電子契約化する
  • 会議をオンラインで行う
  • ガラケーからスマホへ

 

IT化

デジタル化によって、様々な業務が置き換えられました。それらにより、私たちの生活や業務がより効率的に行われることをIT化といいます。具体的には以下のようなことです。

  • 電子化(PDFや画像)した請求書を読み取り経理作業を自動で行うこと
  • オンラインショッピングサイトなど自宅など場所を選ばずいつでもどこでも買い物ができること
  • 電子決済やモバイルバンキング
  • テレワークやオンライン会議を利用した働き方改革

 

DX

デジタル技術が人間生活のあらゆる側面に引きおこす変化と定義されており、ITやデジタル技術を活用することで、従来の活動内容が便利で効率的に変化することを意味します。いくつか具体例を挙げます。

  • スマートウォッチや健康アプリなどのデジタルツールを使って、自分の健康状態をモニタリングや管理を行う
  • Netflix、Hulu、Amazon Prime Videoなどのオンデマンドストリーミングサービスを利用して、映画やテレビ番組をインターネット経由で視聴する
  • 製造業では、ロボットやAIを使って自動で製品を作れるようになり、生産量が大幅に増える
  • 役所では、地域のデータを分析し、課題を見つけて対策を立てられるようになる

このようにデジタル技術の活用で、様々な分野で仕事のやり方や商品・サービスが変わり、私たちの仕事や生活がスピーディかつ効率的、そして便利に行うことができるようになってきました。

 

観光DXってなに?

では、本題の「観光DX」に焦点を当てていきましょう。

観光DXとは、データの活用で、地域を活性化させることです。DXに向けて3つのステップがあったように、「地域活性化」も同じく3つのステップがあります。

これらの過程で「データ収集と活用」を行うことで、よりスピーディーかつ効率的に地域活性化につなげることを「観光DX」と呼びます。

観光DXでは、デジタル技術やビッグデータなどを取り入れることで、これまで取得ができなかった動態分析や、ダイレクトかつ大量のターゲットプロモーションを通して、収益を拡大し、地域活性化につなげることが期待されます。

ここからは、DX化が進んだ1~3のステップに対して、従来からどのような変化が起こったのか代表的な事例をご紹介します。

1.ニーズを把握する

観光客と地域住民の両方のニーズを知ることがマーケティングを進める第一歩となります。従来の紙でのアンケートでデータを取ることも重要ですが、デジタル技術を利用することで、より効率的に、かつアプローチが難しい外国人のデータなども取得が可能です。具体的には、デジタル技術の発展により、以下のような新しい手段が増えました。

  • 来訪者の観光実態調査
    • 【従来】調査員を派遣した聞き取り調査・紙アンケートの留め置き調査
    • ⇒QRを設置し、スマホでの回答を可能に
    • ⇒GPSや通信データを活用した観光客の動態データの取得
    • ⇒クレジットカードの利用データの取得
  • 住民の観光推進に対する意識調査
    • 【従来】対面での意向聴取、窓口に寄せられる意見の集約
    • ⇒公式LINEやSNSを活用し、地域の情報やお得なクーポンを発信するとともに住民の意向を聴取
  • 観光地の入り込み客数調査
    • 【従来】調査員を設置しカウント、駐車場の車の台数から推計
    • ⇒Beacon(ビーコン)の設置による人流観測

 

2.収益を拡大する

観光客に地域を知ってもらう・魅力を伝える、事業者にとっては予約をはじめとする在庫管理の手間を削減し、大幅に効率化させるなど、これまでマンパワーと多様な関係者及び費用がかかっていた収益を拡大するための活動が容易に実施できるようになりました。

  • Beacon(ビーコン)の設置による人流観測
    • Beaconを活用することによって、観光地の正確な入り込み客数を把握
    • データを蓄積し入り込み客数を予測
    • スタッフの配置計画や物販や食材の在庫管理、イベントの日程調整に活用
  • SNSや口コミサイト、インフルエンサーマーケティングなどの活用
    • SNSの口コミや旅行情報サイトの口コミサイトなど膨大なデータを分析することにより、ニーズ・改善点を把握
    • SNSでの記事や広告、YouTubeをはじめとする動画サイトを通じ、マーケットでの認知拡大・魅力訴求を安価かつスピーディに実行
  • 観光客が「来やすい」「過ごしやすい」「また来たい」環境を実現
    • タビマエ情報の提供や二次交通、宿泊施設、体験コンテンツの予約のデジタル化
    • タビナカ情報のアプリ化、スタンプラリーやデジタルクーポンの発行
    • タビアトでのSNSコミュニケーション、定期的な魅力のプッシュ配信やキャンペーン情報の配信

 

3.地域の活性化を図る

収益を拡大する仕組みを元に、旅行者や地域へのサービス向上に利益や恩恵を還元することで観光資源の魅力向上、地域ブランディング、人材確保などの好循環が生まれます。これらは旅行者だけでなく地域の住民への好循環にもなるので、住民の方の理解を得ることにつながり、より良い観光地と地域づくりに貢献することができます。

  • マーケティングデータを地元の企業と共有し、新しい事業やサービスの提供を行うための雇用を増やす
  • デジタル技術を使って地域の文化財の再現や伝統を継承する仕組みを作る
  • 地元の特産品や食材を使った商品を開発オンラインで販売し、常に観光客とのコミュニケーションを担保することで絆や誇りを醸成する
  • デジタル技術の勉強会を開く、専門家を育てるなど、地元の人が活躍できる新しい場所を作る
  • 観光客だけでなく住民もスマホでいろいろなサービスが受けられるようなオンラインシステムを構築する

人材不足でなかなか手が回らない…と悩まれている方も多いと思います。ここで、観光マーケティングでも新しい技術を使うことによって、アナログ→デジタル化で業務が円滑に進むように、今まで手が回らなかったプロモーション活動の実施や、データから新しい気付きを得ることができるようになります。

「人が動いてやること」と「ITやAIに任せること」を上手く区別することで、人材不足やコストカットとマーケティングの高度化の両方を実現することができます。

 

さいごに

予算の投資先も増えてきました。

ただし新しい手段だけに傾倒してしまうと、例えば「動態データ」の購入で人流とボリュームは把握できるものの「誰と来て、どれくらいお金を使ったのか?」「何をして、満足してくれたのか?」という人流を生む理由や効果などの理解にはつながりません。従来のアンケートで質的なデータを取得しつつ、最新の技術を活用していくことで、より信頼度が高くマーケティングに活かせるデータを取得することができるのです。

まずは第一歩、観光客のニーズを把握するために

アンド・ディでは、従来の紙アンケート配付や聞取り調査での費用とマンパワーが負担になる調査方法から、QRの配付・スマホからの回答などIT技術を取り入れた調査サービスを提供させていただいております。まずはお気軽にご相談ください。

インバウンドにも対応した来訪者満足度調査をWeb上の申込みで手軽に実施できるサービス「トラベラーインサイト」もご利用いただけます。

 

<参考文献>

https://kanko-dx.jp/

https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/jizoku_kankochi/kanko-dx.html

https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001726046.pdf

https://mirasapo-plus.go.jp/hint/15869/