2025/09/01
祝はてブ20周年で考えるコミュニティノートと第三者言論の価値【代表コラム】
2025/09/01
代表コラムです。
少し旧聞だが、はてなブックマークが20周年を迎えたという。おめでたい。おめでとう!
知らない方のために説明すると、はてなブックマークをいわゆるソーシャルブックマークと呼ばれるサービスだ。もっとわからないと言われそうだが、要するに本来ブラウザの機能であるブックマークをオンライン化して、更に特定のURLに対するコメントが一覧できるというものだ。派生的にユーザ間のコミュニケーションが発生する仕組みである。
個人的にはインターネットで話題になった出来事やニュースについて、様々な観点からのコメントが一覧できるというのは大変面白い。さらに途中から(はてな)スターと呼ばれる仕組みで投票が評価されることで、はてなユーザ(ユーザの間では「はてなー」と呼ばれる)に人気や注目される記事が並ぶことになり、同時にはてなーは注目を集めるべく工夫をこらしたコメントが並ぶという仕組みである。
任意のコンテンツの多種多様なコメントが一覧で見られるというのはそれなりに中毒性があって、はてブに見慣れてくるとはてブを経由しないニュース単体のサイト閲覧だけでは物足りなくなる。コンテンツサイトが供給するソーシャルブックマーク的なものはいくつかあるが、自社コンテンツに対するコメントしか掲載されないのであんまり面白くないし、コメントも想定内にとどまる。それに対して、すべてのURLに対してコメントが付く(はてなは自社としてはコンテンツがほとんど無い)フラットさがはてなブックマークの魅力である。
このようなユーザのコメントや文章を集約することで何らかの情報の評価や知識を導き出す仕組みを一般的に集合知(Collective Intelligence)と呼ぶが、ソーシャルブックマークはその典型例であり、ゼロ年代後半に流行ったWeb2.0的なサービスとしては当時今とは比較にならない熱狂をもって迎えられていたように思う。
その後様々なWeb2.0サイトが出てきたと思う。一つはマイクロブログサービスでその寵児だったTwitterが日本では社会的に見てもインフラとなった。しかしその後Twitterはイーロン・マスクに買収されXとなり、文字通り得体のしれないボットとフェイクニュースの戦場となっているのはご承知の通りかと思う。
そんなXだが、Twitter時代から開発していたフェイクニュース対策としてコミュニティノート(BirdWatch)と呼ばれる機能がある。怪しい投稿に対してこれは信頼できない、問題だと感じたユーザがノートと呼ばれるコメントを付けられる仕組みである。面白い工夫としては更にそのノートが第三者に「信頼できる」と評価されると初めて表示されるところだ。
コミュニティノートの例(いずれリンクはワークしなくなるかもしれない)
https://x.com/i/birdwatch/t/1959068025732440460?source=6
一方で、コミュニティノートを有効に活用して、深刻化するフェイクニュース対策として活用するシビックテックトレンドもある。事後で申し訳ないがちょうど先日セミナーがあったので紹介しておきたい。コミュニティノートで分析する参議院選挙 · Zoom · Luma
人類にSNSは早かったとしばしば自虐的に語られるが、フェイクニュースやそれに近い信頼性の高い投稿によるより一層の社会的混乱は深刻になるばかりで、どう対策してよいのかもわからない。しかし自由な第三者による言論が言論の正しさを保証するという民主主義的な仕組みはおそらく普遍的なものなのだろう。
しかしその一方でその20年の歴史の中で、はてなの自由すぎるコメント投稿がネットの暴力となって悲劇を生んできたことも経験している。更に最近ではイーロン・マスクのTwitter買収や、トランプ大統領による私的なSNSの登場など、第三者の自由(?)なコメントによる言論空間への影響が大きくなるばかりだ。やせ衰えつつも独占プレイヤーとしてのネガティブさを強く批判されるようになったマスメディアの弱体化とともに、言論の無責任化と荒廃は温暖化以上に人類共通の大きな課題のように思われる。今後ますますAIによる人工的で破廉恥な世論形成が進むだろう。発信者情報開示とファクトチェックという竹槍ではとても太刀打ちできそうにない。多分誰も答えは持ち合わせていないように思う。暗黒啓蒙に希望を見出す人の気持ちもわからないではない。暗黒啓蒙についてはは近いうち書きたい。