世界の観光業界において、旅行者の期待と関心が大きく変化しています。伝統的な観光名所やランドマークだけでなく、地域の個性や文化を体験できる新しい形式の観光が求められているのです。実際に地域の資源や文化を体験することを「体験型観光コンテンツ」と呼び、この記事では世界や日本の事例を見ながらその魅力やトレンドについてご紹介します。

OECD加盟国における旅行消費額全体のうち娯楽サービスが占める割合は、2016年時点ですでに12%になっています。日本もその割合は上昇してきていますが、2023年で5%と未だ少ないです。日本の観光業界においても娯楽サービスのポテンシャルが未だに大きく、成長の余地があることを示唆しています。

アメリカでトレンドの「Set-jetting」とは?

国が行っている、地方へ外国人旅行者を誘客する動きに乗るために、日本の地方にしかない伝統的なお祭りやイベントなど独自性を活かした旅行体験の提供が必要です。そのためにまずは、アメリカの最新観光コンテンツのトレンドをご紹介します。昨年から引き続き、「Set-jetting(セット・ジェッティング)」です。自分の好きな映画作品やゲームの世界を、自分が物語の主人公のように楽しむことで、旅行体験の更なる充実・自己実現感が高まる価値をもたらすと云われています。観るだけ・知るだけ・触るだけのコト消費ではなく、自分が登場人物になってしまうことがトレンドなのです。

「外国人に人気の日本の体験・ツアーランキング2020」によると、日本食や文化体験、ウォーキングが挙げられています。いずれも都市部でのコンテンツですが、田舎ならではのSet Jettingな体験として地元食材の買い物に一緒に出かけ、選び、一緒に作り、食べるという、何気ない田舎の1日を過ごす提案もできるのではないでしょうか?また、実際にお祭りに何かしらの役割を与えて参加してもらうなど、暮らすように旅をしたい・観るだけでなく、体験を通じた豊かな旅行の提供が実現できるのではと考えられます。

地域の環境に配慮した持続可能型のコンテンツ

また、国内事例として、「SATOYAMA EXPERIENCE」を紹介します。岐阜県の飛騨古川で人気のサイクリングツアーで、ご存じの方も多いかと思います。すでに飛騨古川で体験型コンテンツを展開されていましたが、2023年に、持続可能な観光に関する国際基準「Travelife Partner」を取得されました。国内地方部では初の取得になり、サステナビリティと企業の社会的責任に関する長期的な取り組み、地域に根ざした先駆的な活動が評価されました。

自らも持続可能な旅行を意識し、環境に配慮した活動や地域社会の支援に貢献することが近年の旅行者の特徴でもあり、それはまた旅行者の責任でもあるという考え方が多くみられます。そのような旅行者をひきつける要素として魅力的な体験コンテンツを作るだけではなく、組織や地域自体が責任ある活動を続けていることも必要になります。

観光推進戦略における体験型観光コンテンツの役割

観光推進戦略においては、事業者・来訪者・住民が観光推進活動に緊密に関わることが不可欠です。観光事業者だけでなく、観光推進における地域や生活の変化(恩恵)を感じることで住民のコミット意識が高まり、その結果、来訪者に対しても誇りを持てるような良好な循環が生まれます。そのためにも地域固有の資源や魅力を守り、来訪者にだけでなく地域内での伝える活動が重要になってきます。「体験型観光コンテンツ」は資源や魅力を”ストーリーを持ったほんものの体験”として造成する必要があり、それは来訪者だけではなく住民に自地域の魅力を再確認してもらう施策のひとつにもなります。住民が地域に誇りを持つことで、訪れる人にもよりその良さが伝わるのです。

アンド・ディでは、観光にまつわる実績を持ち、サスティナブルな地域づくりを『観光』という手段を使って行うこと」を「観光地域づくり」と定義し、地域のブランド管理、住民意識、来訪者満足度などを企画から調査、分析まで行っております。「観光地域づくり」についての説明やそれに伴う調査・分析についてはコチラの記事を参照ください。

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