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ここまで、生成AIの仕組みや種類を確認してきました。これまでの内容を踏まえて、この記事では生成AI・LLMがビジネスに与える影響や、実際の応用事例について解説していきます。
※本記事は「生成AIの基礎知識」の第4回です。初回「(1)生成AIとは」(公式web動的コンテンツ_1. 生成AIとは)、第2回「(2) ChatGPTとは」(公式web動的コンテンツ_2. ChatGPTとは)、第3回「(3) ChatGPT以外の生成系AI・LLM」(公式web動的コンテンツ_3. ChatGPT以外の生成AI・LLM)を読んだ上でこちらの記事に目を通していただくとより理解が深まります。
本記事を読まれている方には、マーケティング分野でのAIの活用方法について検討されている方も多いのではないでしょうか。
生成AIの出現は、デジタル化された情報やパターンを再構築し、マーケティングリサーチ業務(MR)に画期的な変革をもたらしています。この技術は、問い合わせ対応、レポート作成、さらには特定のビジュアルコンテンツの生成まで、様々なタスクを自動化する可能性を秘めています。
具体的には、以下のような分野での応用が考えられます。
これらのプロセスは、多くの場合でパターン化されており、生成AIの活用によって、マーケティングリサーチ業務の自動化と最適化が進むことが期待されます。
生成AIの活用は、マーケティングリサーチのプロセスを根本から変える可能性を持っています。リサーチ業務の自動化だけでなく、消費者のニーズや嗜好をより正確に捉え、迅速に反映させることができるようになることで、マーケティングの戦略立案においても大きなメリットが生まれます。生成AIは、マーケティングリサーチをより効率的かつ効果的に行うための強力なツールとなり得るでしょう。
マーケティング分野にとどまらず、大規模言語モデル(LLM)の台頭は、多様な業種において業務プロセスに革命的な変化をもたらしています。これらのAIモデルの能力拡張により、コンピューターが真似できる範囲、いわゆる「デジタル化されたパターン」が大幅に広がりました。従来、人間による専門知識や高度な判断を必要とする作業も、ある程度のパターンが認識されれば、LLMが効果的に模倣できるようになっています。特に、イラストや写真の分野でこの傾向は顕著です。また、次のような領域で今後LLMの大きなインパクトがあると考えられます。
LLMの進化により、業務プロセスの効率化だけでなく、専門知識を要する分野でも高度な作業が自動化される可能性が開かれています。
それでは、実際にどのような企業で、生成AIやLLMがどのように活用されているのか見ていきましょう。
農林水産省は、農業や漁業の事業者が補助金の申請を行う際に必要となるマニュアルや関連文書の改訂・修正プロセスに、ChatGPTを活用しています。これにより、これまで毎年業者に委託していた文書の更新作業を効率化し、より迅速かつ正確に行うことが可能になります。
さらに、農林水産省は「すでに公表されている文書を簡略化するための活用」も検討しています。この取り組みは、補助金申請のプロセスを事業者にとってより理解しやすくし、手続きの負担を軽減することを目的としています。
サイバーエージェントは、「ChatGPTオペレーション変革室」を設立し、ChatGPTを活用して広告運用作業時間を大幅に削減することを目指しています。具体的には、広告配信設定の最適化、運用改善、レポート作成などの効率化のためにChatGPTを用いています。これにより、広告オペレーションの総作業時間を月間約23万時間から約30%削減されることが見込まれています。
パナソニック ホールディングスは、GPT-3.5を基にした独自のAIモデル「PX-GPT」を開発し、社内での利用を進めています。このモデルはAzure OpenAI Serviceを利用しており、セキュリティ面に特に配慮されています。具体的には、入力された情報の二次利用や第三者への提供を防ぎ、一定期間後には情報を自動的に消去する仕組みが取り入れられています。
Quoraは、ClaudeなどのAIを活用して新たなチャットサービスを提供しています。このサービスは、Quoraの豊富な知識ベースを活用し、ユーザーの質問に対して即時かつ精確な回答を提供することを目的としています。
Notionは、Claudeを利用したNotionAIを提供しています。このAIは、Notion上で自動で文章作成が可能なほか、ToDoリストの自動生成、シーケンス図の作成、テンプレートの作成なども行えます。
ZoomはAIの開発を行なっているAntropic社に対して投資を行い、AIシステムの構築をサポートすることを宣言しました。今後は、Zoomが提供するサービス全体にAntropicのAIを組み込みみ、ユーザーエクスペリエンスの改善を行なっていく予定です。
既存の生成AIを利用するにとどまらず、LLMの開発を行なっている企業もあります。
サイバーエージェントは、国内最大級の日本語対応の大規模言語モデル(LLM)、OpenCalmを2023年5月17日に公開しました。このモデルはGPTをベースにしており、最大68億パラメータを持っています。さらに、OpenCalmはオープンソースとして提供されており、国内外の開発者が自由に使用することができます。
さらに、rinna株式会社は、日本語に特化したLLM「japanese-gpt-neox」を開発しました。このモデルは36億のパラメータを持ち、GPTモデルをベースに構築されています。さらに、このモデルはオープンソースで公開されており、”-sft”バージョンはInstruction Tuningが施されています。rinna社によると、”-sft”バージョンは、同社の「open-calm 7b」と比較しても優れたパフォーマンスを提供するとのことです。
マーケティングリサーチの分野でも、生成 AIは積極的に活用されています。最後に、弊社アンド・ディで開発、提供しているマーケティングリサーチ業務の効率化のために、生成AIを用いた以下のようなサービスをご紹介します。
コーディストは、大規模言語モデルのGPTを用いることで、これまでになく簡単に自由回答回答をコード化することができるツールです。
アンケートの自由回答設問は、計測可能な数値データとは違い、比較や分析が行いにくいという難点があります。そこで必要となる作業がアフターコーディング。しかし、表計算ソフトなどを用いたアフターコーティングは時間と手間がかかります。
そこで、アフターコーディングにかかる人手と時間を大幅に削減するシステム「コーディスト」を開発しました。コーディストは生成AIのシステムを用い、自由回答の内容を入力すると自動で分類コードの生成・表記ゆれの修正を行います。また、コード付けした結果をCSVやExcel形式でダウンロードしたり、集計結果を自動でマッピングしたりすることもできます。
コーディストの機能の一部は無料で使用できるので、試してみたいという方はぜひ以下のリンクをご参照ください。
アイディエータは、LLMのGPTを活用して商品開発時に必要となる新しい切り口のアイデアを生成できるAIです。
マーケティングの結果を商品開発に結びつけるためには、消費者に刺さる商品アイデアを多く持っておくことが重要です。しかし、自分と全く異なる消費者の目線で商品のアイデアを考案するのは簡単なことではありません。そこで、アイディエータを用いれば、販売ターゲットとなる消費者を細かく設定することで幅広い切り口のアイデアを数分で生成することができます。また、生成したアイデアをランキング評価したり、商品説明文と商品のパッケージ画像を生成することもできます。現在はまだβ版ですが、企業や各種団体の方であればサイト上で無料でご利用いただくことができます。詳しくは以下のリンクをご参照ください。
本記事をもって、「生成AIの基礎知識」シリーズは終了です。ここまでお読みいただきありがとうございました。今後は、よりマーケティングリサーチの業務の現場で生成AIを活用した具体例をご紹介します。