「学校部活動」の地域展開【メンバーコラム】

エッセイ コラム
「学校部活動」の地域展開【メンバーコラム】

学校の「部活動」は、スポーツ・文化・科学などに興味を持つ生徒が自主的に参加する、教育的意義の高い活動として、生徒の成長や人間関係の構築に貢献してきました。しかし、少子化や教員の負担増などの課題により、従来の体制の継続は困難になっています。
こうした背景から、「休日における部活動の地域展開」の検討が進められており、2025年5月16日、スポーツ庁と文化庁の有識者会議である地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議において、「2031(令和31)年度までに原則休日の部活動の地域展開実現を目指す」等とする部活動改革に向けた最終取りまとめが行われた旨の発表がありました。
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また、東京都教育委員会は、持続可能な活動環境を整えるために、学校と地域の連携を促進し、地域クラブ活動への移行を含めた部活動改革を推進する「総合的なガイドライン」を策定しています。ガイドラインの序文では、知・徳・体のバランスを重視した「生きる力」の育成を目指し、教職員・保護者・地域が一体となった取り組みが求められる、としています。
このガイドラインの目指す方向性は以下のようなもので、休日の部活動に限らず、地域との連携に取り組むことを目指す内容となっています(以下引用)。
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学校部活動及び地域クラブ活動に関する総合的なガイドラインの趣旨
生徒の豊かなスポーツ・文化芸術活動の機会を確保するとともに、学校における教員の勤務負担軽減を図るため、部活動検討委員会における協議を経て、「学校部活動及び地域クラブ活動に関する総合的なガイドライン」を作成しました。
〈主な方向性〉
➀ 学校と地域との連携・協働により、学校部活動の改革に取り組み、生徒がスポーツ・文化芸術活動に継続して親しめるよう、環境を整備すること。
② 学校部活動及び地域クラブ活動において、生徒の自主的・自発的な参加になるよう、指導体制を構築すること。
③ 技能や記録の向上等、生徒がそれぞれの目標を達成できるよう、科学的トレーニングの積極的な導入等により、短時間で効果が得られるようなより合理的でかつ効率的・効果的な活動を行うこと。
④ 成長期にある生徒が、教育課程内の活動、部活動、学校外の活動、その他の食事、休養及び睡眠等の生活時間のバランスのとれた生活を送ることができるよう、休養日や活動時間を適切に設定すること。
⑤ 学校部活動の地域移行を見据え、学校部活動において専門的な技術指導に加え、大会引率等ができる部活動指導員及び外部指導者を積極的に配置するなど、教職員の負担軽減を踏まえ、地域と連携して指導体制を整備すること。

ガイドラインの中で東京都は、従来の学校部活動に所属していた生徒だけでなく、所属していない生徒、運動や歌、楽器、絵を描くことなどが苦手な生徒、障害のある生徒など、希望するすべての生徒を参加者として想定していることを示しています。
また、運営の効果的・効率的な推進のために、様々な地域スポーツ団体や文化芸術団体等の整備・充実を計ることも示されています。スポーツを例にとると、総合型地域スポーツクラブやスポーツ少年団、体育・スポーツ協会、競技団体、クラブチーム、プロスポーツチーム、民間事業者、フィットネスジム、大学など多種多様な連携先を想定しているようです。

地域によっては、部活動の時間の短縮、地域の大学生・スポーツクラブのトレーナーが指導にあたるなどの取り組みをすでに始めているケースもあるようです。こうした外部のスポーツ団体との連携によって、学校教員の指導・大会引率などの負荷が軽減されることが期待されています。生徒にとっては、大学との連携が進むことで、より専門的でレベルの高い指導が受けられるだけでなく「将来の進学につながりやすい」といったメリットもありそうです。

さらに、部活動を学校という場と切り離して考えてみると、技能の向上や大会出場を目的としないような、たとえばウォーキングやラジオ体操などの軽いスポーツであったり、楽しく絵を描いたり工作をしたり、日曜大工的なDIYを楽しんだりといった、ちょっとゆるめの活動も部活動として「あり」なのでは?という気がします。地域の大人は指導者・指導員としてかかわるだけでなく、部活動の”参加者”として関わることもできるかもしれません。ずいぶん昔に学校を卒業した自分にとっても、これはかなり楽しそうに思えます。何らかのかたちで関わりを持てるチャンスがあるのか、今後の展開が楽しみです。