11/21,11/28,12/5の3日間、日本マーケティング・リサーチ協会主催の「第9回定性調査インタビュー実践講座」に参加しました。この講座は、定性調査を行うインタビュアー、もしくは企画者、分析者が、インタビュー実施の現場で何をするべきかを、実践を通して身につけ、業務に活用するためのもので、「インタビューの実践」に多くの時間が割かれているのが特徴です。

参加者は、自分でインタビュアーやインタビューの分析をするなど、”現場”に接する機会がある人がほとんどで、「自分のやり方では不足があるのではないか」「もっと深い心理を聞き出すためにはどうしたらいいか」という問題意識を持つ方が多く参加されていました。

1日目にはまずインタビューの意義、インタビュアーの役割についての講義があります。

定性調査(インタビュー)という手法で把握できるのは、自覚的にか無意識的はわからないが対象者が表立っては明らかにしていない意見や、人と会話することで初めて気づいて言語化できる意識や価値観といった部分で、確かに、本人すら自覚していないことをあらかじめ選択肢として用意しておくのは難しいでしょう。

会話の内容そのものが得られる情報であると同時に、対象者への刺激でもあるため、インタビュアーには会話に対する相当の注意力が求められますが、インタビュアーの心構えとして講義でも実践でも繰り返し注意されたのは、まずは対象者の話を音としてきちんと「聞く」、その中から気持ちや意識に触れられそうな部分を取り出し理解するために耳を傾けて「聴く」という態度が重要で、もっと詳しく知るため・洞察したことを確認するために「訊く(質問する)」のは最後であるという点だったと思います。

このあたりで「とはいえ実際にやるのは難しそうだな…」という感覚に陥ったところで、5分程度のパーソナルインタビューの実践があります。与えられた共通のテーマについて、1人がインタビュアー、1人が対象者になり、それ以外の参加者はインタビューを見る(観察する)という形式です。続く2〜3日目は、自分で設定したテーマ・フローに従って、インタビュアー1名に対し対象者3名で、15分程度のグループインタビューを実践したあと、各自に講評があります。

筆者の場合は、1日目のパーソナルインタビュー、2日目のグループインタビューの後いずれも、「話を聞く・聴く態度が弱く、質問してコントロールしようとしすぎる」点を注意されました。要するに、座学で繰り返し説明された「インタビュアーの心構え」がそのまままるっとできていないというわけで、難しさを痛感しました。

質問するよりも「場を作る」ことがインタビュアーの役割であるとはいえ、『あいづちや短い言葉で相手の発言を促すテクニックを駆使して、今行われている会話をできるだけ熱い状態のうちに刺激しつつ、テーマから逸脱しすぎず、ただしコントロールしている状態にはならないように「聴く」』というのは、かなり難易度の高いコミュニケーションだなと思いました。

ただ、インタビュアーの体験をしただけではわかりにくいのですが、自分が対象者になってみると「コントロールしないで聴くとはどういうことか」が腑に落ちる瞬間がありました。ただ単に質問されたことに答えるだけというよりも、インタビュアーや他の対象者がどんな反応をするかが気になる。インタビュアーの反応が鈍ければ「期待はずれの回答をしたのかな?」と不安になってなんとなく全員話しづらくなるし、楽しげに聞いてくれることで話しやすい雰囲気が作られるといった具合で、場の空気ができてくるのが感じられます。

活気のある会話の場を作るためには、(当然のことながら)インタビューにおける調査課題を明確にし、十分に理解したうえで、フローを作成しておく必要があります。また、メインの調査目的に関する設問だけではなく、ラ・ポール形成のための質問や事前アンケートなども、単なる自己紹介やインタビューの補足的な情報と考えず、対象者を理解するための基礎情報の一つとして意識する必要があると感じました。(ちなみに、これらの調査課題の設定から対象者の設定、フロー作成までの一連の「企画」も重要なポイントとなってくるため、先立って開催されている『定性基礎講座』『企画講座』も併せて参加されることをお勧めします)

インタビューの場をコーディネイトする側として、クライアントの課題を理解し、入念に準備を行なっておくことの重要性を改めて認識する機会になりました。インタビュアーとしてのスキルは一度のセミナー参加で身につくものではないので、これから機会を作って習得していきたいと思います。