インバウンド消費動向調査を活用しよう ──「温泉」を切り口とした観光資源別消費行動

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インバウンド消費動向調査を活用しよう ──「温泉」を切り口とした観光資源別消費行動
対象調査:インバウンド消費動向調査(2025年通年)
分析対象:温泉地を有する市町村 全75地点
サンプル:延べ70,581訪問件数

分析の背景と手法:資源カテゴリー別再集計とは

インバウンド消費動向調査は国全体での消費実態を把握する大規模調査だが、「地域資源の切り口」で再集計することで、DMOや自治体の施策立案に直結する知見に変換できる。
今回は「温泉」を資源カテゴリーとして採用し、全国の温泉地を有する市町村リストと調査の訪問地データを突合した。その上で、各温泉地を温泉メイン型(A)温泉+都市近郊型(B)温泉+自然・文化資源型(C)の3タイプに分類し、タイプごとの訪問構造・消費行動・旅行者属性を比較分析している。

タイプ A / 6地点
温泉メイン型
訪問件数1,727件
平均泊数(エリア)2.50泊
日帰り率17.1%(最低)
旅館利用率35.7%(最高)
エリア内消費合計33,222円

タイプ B / 10地点
温泉+都市近郊型
訪問件数44,564件
平均泊数(エリア)2.72泊
日帰り率24.8%
旅館利用率3.2%(最低)
エリア内消費合計55,940円

タイプ C / 59地点
温泉+自然・文化資源型
訪問件数24,290件
平均泊数(エリア)1.84泊(最短)
日帰り率28.4%(最高)
旅館利用率15.9%
エリア内消費合計33,243円

エリア内消費の構造:タイプ間で最大1.7倍の格差

エリア内の消費総額はタイプBが55,940円と最も高く、タイプA・Cの約1.7倍に達する。飲食費・買物代ともにタイプBが最高水準で、都市ならではの豊富な飲食店や商業施設が消費を後押ししている。ただし旅館利用率はわずか3.2%。温泉は「都市観光のついでに立ち寄る体験」として捉えられており、じっくり湯に浸かって泊まるというより、気軽に楽しむプラスアルファの位置づけに近いと考えられる。

図1 温泉地タイプ別エリア内消費額内訳

娯楽等サービス費の低さは温泉地に限った話ではなく、全国平均も2,243円と低水準にあることから、温泉地固有の課題とはいえない。ただし、温泉ならではの体験やアクティビティが充実することで、「日本らしさ」を実感できる消費の機会が広がり、地域全体の消費拡大につながる可能性は十分にある。

旅行者の属性:タイプごとに異なる「客層の顔」

同じ温泉地を訪れる旅行者でも、タイプによって国籍構成は大きく異なる。ただし、いずれのタイプでも東アジア4市場(韓国・台湾・香港・中国)の割合が高い点は共通している。
東アジアには日本と同様に温泉文化が根付いている地域が多く、特にタイプAでは東アジア旅行者の割合が高いことから、温泉そのものを主な目的として訪れている旅行者が多いことがうかがえる。

一方で、都市や自然・文化資源と組み合わさるタイプB・Cでは欧米旅行者の比率が高まる。これは、温泉単体では欧米旅行者にとってまだなじみが薄くても、都市観光や自然景観といった他の魅力と組み合わせることで、訪問のきっかけが生まれやすくなることを示唆している。言い換えれば、温泉を「単独の目的地」として売り出すより、地域の他の資源と組み合わせてPRすることが、欧米市場の開拓において有効な戦略になるのではないだろうか。

図2 タイプ別国籍構成比較

市町村別訪問者ランキングTop10(温泉目的旅行者ベース)

自由回答設問「訪日前に一番楽しみにしていた観光スポットや行動は何でしたか」で「温泉」と回答した1,782人を対象に、市町村別の訪問者数を集計したランキングが以下となる。

順位 市町村内温泉資源 来訪市町村 温泉地タイプ 構成比
1 湯平温泉・由布院温泉 大分県由布市 タイプ C

28.0%

2 別府温泉郷 大分県別府市 タイプ A

22.6%

3 定山渓温泉 北海道札幌市 タイプ B

11.3%

4 嵐山温泉・大原温泉 京都府京都市 タイプ B

8.8%

5 天ヶ瀬温泉・日田温泉・奥日田温泉 大分県日田市 タイプ C

6.5%

6 カルルス温泉・登別温泉 北海道登別市 タイプ A

5.4%

7 箱根温泉 神奈川県箱根町 タイプ C

5.2%

8 植木温泉 熊本県熊本市 タイプ B

4.9%

9 朝里川温泉 北海道小樽市 タイプ C

4.1%

10 洞爺湖温泉 北海道洞爺湖町 タイプ C

3.5%

インバウンド消費動向調査の多様な再分析アプローチ

今回紹介させていただいたのは、「温泉」という資源を切り口とした再分析。各地域が保有している資源と、インバウンド消費動向調査の訪問地データを組み合わせて分析することで競合エリアや主要観光地との比較や違いを確認することができる。

またまだ、地域におけるインバウンドのデータを収集する手立ては少なく、かつ費用がかかる場合が多い。
インバウンド消費動向調査は、日本国内で経年同一の調査票で大サンプルを取得している調査である。このデータを可能な限り観光地マーケティングに取り込んで、少しでもインバウンドの動態を追うひとつの手段として活用していただきたい。

【集計・分析概要】
・使用データ:観光庁「インバウンド消費動向調査」【B1地域調査】(2025年通年)
・分析対象:温泉地を有する市町村(温泉地リスト該当75地点)
回答者数:46,963人(エリアベース延べ訪問件数:70,581件)

【注記】
・本文・図表に掲載しているスコアはすべて、観光庁「インバウンド消費動向調査」の個票データを独自に再集計・分析したものです。
・集計は観光庁の「インバウンド消費動向調査個票データ利用の手引き」に基づいて実施。ウェイトバック(WB)集計を実施しています。
・エリアベース集計は、訪問地回答(入出国地点を除く)の延べ件数を基に集計しています。

【お問い合わせ】
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