新型コロナウイルス感染症対策として、日本でもワクチン接種が急速に進む中で、ワクチン接種や感染状況を鑑みながら、旅行計画を考えている旅行者が増えている状況は弊社自主調査(こちら)でも確認されています。そのような状況下、コロナ禍における旅行者の意識構造はどのようになっているのでしょうか?

インタビュー調査の概要

今回ご紹介する調査「新型コロナウイルス感染症の拡大による旅行意識の変化」は、旅行に行きたい気持ちを阻害する要因がどのような要因により構成されているのか、旅行意向の強さによってタイプ分けされたグループ間でどのような差異があるのか、その意識を定性調査(デプスインタビュー)の結果から紐解いたもので、今後の施策立案に活用できるようになっています。

調査設計のポイント

実施時期はまだワクチン接種が始まる前の3月に実施された調査で、ワクチン接種が始まることにより社会環境や人々の意識が変化していく中でも、その根底にある心理的な要因を把握し、構造化することは重要なテーマだと思います。
ヒアリングする時間が1時間程度と限られている定性調査を成功させるために重要なことは、分析計画を明確にすること、すなわち、何が明確にしたいのかの優先順位をつけ、絞り込むことだと言われています。そのためには調査対象者条件の設定と、テーマに関する調査対象者間の差異を見出すためのシナリオを綿密に計画することが肝要です。

今回の調査に先立ち、じゃらんリサーチセンターの先行研究としての定量調査結果から、旅行意向の高低により、旅行に対する意識や行動が異なり、旅行施策を考えるためにターゲットのセグメントを旅行意向(=国内旅行に対する意欲)によって3層に分類する手法が提案されていました。
今回はその定量調査を基に、「アクティブ層(コロナ禍での宿泊旅行2回以上)」「中庸層(同1回)」「休眠層(同0回)」の各2名を対象者に選定しています。また、コロナによる影響とその背景要因を明確に抽出するために、コロナ禍以前の旅行行動は同程度になるように慎重に対象者を選定しています。

コロナ禍での「旅の不安」の背景にあるプロフィール要因とは…

クリックで拡大いたします。

この調査で特に興味深かったのは、コロナ禍での旅の不安要因を5種類に仮説立てし、それを3層で比較分析する中で、旅の不安の背景にあるプロフィール要因が「個人的・内面要因」「社会的・環境要因」の軸で浮き彫りにされたことです。特に「社会的・環境要因」を構成する「社会的立場」、「しがらみの多さ(人間関係の密度)」が旅行行動を抑制することは、国際比較したわけではありませんが、日本で特徴的に作用する要因だと考えられます。
旅行業界としてコントロールできる可能性がある「社会的要因」を対策することで、旅行行動が抑制されている中庸層をどう活性化させていくかの道筋が見えてきたことが、大きな収穫だったといえます。

調査結果の詳細は6月発行「とーりまかし」最新号の下記特集をご覧下さい。

◆第3特集◆
「新型コロナウィルス感染症による旅行意識の変化」の調査結果より
ターゲット別にみる旅行市場復帰への「壁」

「とーりまかし」2021年6月発行 →こちらから(PDF)