地域経済分析システム『 RESAS 』(リーサス:Regional Economy Society Analyzing System)は、産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約し可視化するシステムです。地方創生の様々な取り組みを情報面から支援するために、経済産業省と内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が提供しています。この『RESAS』を活用した地域経済の分析や地域の魅力発掘に役に立つアプリケーションを募集する 「第3回RESASアプリコンテスト」の最終審査会&表彰式が、2月16日(土)に催されました。 弊社では地域創生関係の案件を多く取り扱っているため、データベースとしての『RESAS』には比較的なじみがあるのですが、 コンテンスト参加者はどのような関心を持って参加しているのか、 『RESAS』を使ってどのような取り組みが行われるのか、といったことに興味を感じ、表彰式に参加してきました。

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最優秀賞は、『(仮)温暖化対策を計画してみよう』(t.matsuoka/大阪府大東市)で、タイトルの通り、RESASその他のデータを使用して地域の温暖化の状況の把握と今後の対策による効果を推計するアプリケーションです。 温暖化に影響を与える「温室効果ガス」の大半を占めるCO2を分析対象として、資源エネルギー庁の「都道府県別エネルギー消費統計」と 各種統計指標などのデータから、市町村単位のエネルギー消費量とCO2排出量を推計。また、RESASの社会経済データをCO2排出要因の将来増減予測の変数として用いていて、将来の経済情勢やエネルギー効率、家庭での省エネ取り組み状況の条件を設定することで、CO2排出量の将来推計が行えるという仕組みになっています。 利用シーンとして「地球温暖化対策の普及・啓発や環境学習での利活用」を想定しているということでしたが、学習教材としてだけでなく、市町村単位での温暖化対策実行計画策定書にも使えるフォーマットでアウトプットができるようになっており、グラフのビジュアルもきちんと作り込まれていて丁寧な作り。また、社会経済的な変化や取り組みのシミュレーションだけでなく、家庭でのLED照明への切り替えなど、身近な取り組みによる効果をイメージできる仕組みも組み込まれているので、多方面に渡って細やかに色々工夫されているなあという印象を受けました。たしか講評でも言及があったように記憶していますが、これをお一人で構築されたという点にかなり驚きました…。 優秀賞は、『行政リソースマッチングサービス「WiseVine」』(株式会社 Weldrow/東京都世田谷区)。こちらは、施策立案のために、例えば新しい特定財源や他の自治体での事例、より良い提案を行える事業者を探したいといったニーズに対して、「ヒト・モノ・カネ・ジョウホウを効率的にマッチングするためのサービス」ということで、各自治体がバラバラなフォーマットで持っている情報が統一のフォーマットに整理され、データベースとして集約されています。 その中でRESASデータは、データベースからの検索・抽出キーとして使用されており、例えば合計特殊出生率が高い自治体だけを抽出するなどといった絞り込みを行い、実際に成果を上げている自治体がどのような事務事業を実施しているのかを把握できる仕組みになっています。RESASデータがメインの役割を担うアプリではありませんが、データベースそのものが、多くの人手を使って綿密に収集された非常に充実したものであるという印象を受けました。 その他では、情報の収集方法やアウトプット方法はそれぞれ異なるものの、観光案内の情報提供を目的とするものがいくつかありました。エリアの在住者や訪問者からSNS的に情報を集め、RESASの観光マップと紐づけて利用するアプリについては、審査員の方々から「集められた情報の選別・クリーニング・精査をどのように行っているか」という質問が必ず入りました。「生の声」は、情報として有用な部分が確かに多いとはいえ、利用者が増えればそれだけネガティブ情報も増えそうですし、適切なデータのクリーニングは欠かせないでしょう。 例えばネガティブな写真+テキストの投稿があった場合、いずれもクリーニングの対象にはなるけれど、両方を削除するのではなく、「排除されるべき情報」だけを除外する手続きが必要で、それだけクリーニングの工数も増え、ルールも煩雑になりそうです。わかりやすい例をあげれば、「ここのトイレはキレイじゃない」というテキスト情報は欲しいけど、写真は見たくないといったような場合。また、ネガティブ情報ではなくても、投稿者全てが同じ名物メニューの写真ばかりをアップしてきたら、その中でも美味しそうできれいに撮れた写真だけ残したい…といった場合もあるかもしれません。 今回、審査の候補となっているアプリでは、情報量自体がまだ十分に多くはなく、ネガティブ情報やいたずら・情報の重複が問題になることはなさそうでしたが、普及を目指していく段階では、こうした問題もあらかじめ想定しておく必要がありそうです。 コンテストそのものには無関係かもしれませんが、弊社のデータインテリジェンス事業部では、こうした投稿による写真やテキストといったデータのクリーニングも扱っていくので、その具体的な適用例をいくつか見ることができたように思います。

<紹介した受賞作品>※各タイトルから紹介ページにリンクしています